厭世館へようこそ。

ここは厭世館。ぼくのすむところ。

*コーヒーと檻

 

 

この世には、二種類の人間がいる。

 

‘従う者’

‘従える者’

だ。

 

当然力関係でいえば後者の方が強く、前者は圧倒的に弱いが後者に比べると圧倒的な数だ。

 

‘従う者’は、どんな事があろうとも‘従える者’には逆らえない。足が捥げようが親が死のうが、‘従える者’のベルが鳴れば、そこへ居なければならない。

 

 

どうでもいい話はここまでにして、物語の概要を話そう。

 

人口増加と共に、世の中は様々に変化していった。

犯罪率の増加も、そのうちの一つだ。

 

そして、犯罪者であふれかえった刑務所で、試験的に運用が開始されたのが、

❝特務更生官❞の設置 である。

 

特務更生官は、実際の犯罪者と肉体を交換し、犯罪者が社会復帰しやすくなるよう、三か月間の求職活動、服役中の関係者の行動調査等を行ってもらう。

 

なお、特務更生官の基本留意事項は、

・任務からの脱走、他の犯罪者の脱獄の手助けなどの行為は、当然刑罰の対象となる。

・マニュアルに書かれていない事は、命令された場合、もしくは許可のあった場合のみ遂行する事。

・外出時は必ず、GPSチップの入ったIDカード(免許証に偽装)を持ち歩くこと。※外出先でこれが身体から離れた場合、脱走とみなされ、速やかに処分されます。

・如何なる時も、本部からの命令には従うこと。

 

10人程の、同じツナギを着た男たちの前で、軍服の男が無機質に手元のバインダーに挟まれた‘マニュアル’を読み上げていった。

 

ツナギの男たちの胸には、ネームプレートが、それぞれ吊られていた。

 

「では、最初の任務で君たちが使う名前を発表する。」