厭世館へようこそ。

ここは厭世館。ぼくのすむところ。

かきもの

*コーヒーと檻

この世には、二種類の人間がいる。 ‘従う者’ と ‘従える者’ だ。 当然力関係でいえば後者の方が強く、前者は圧倒的に弱いが後者に比べると圧倒的な数だ。 ‘従う者’は、どんな事があろうとも‘従える者’には逆らえない。足が捥げようが親が死のうが、‘従える者…

*戀人 「喫茶店にて。2」

「そう思うか。」 彼は爆発寸前だった。さっきから手元が落ち着かないし、いつもより明らかに声が低い。 「だって……。」 「だって?」 「彼女、嬉しそうでしたね。あんなメール、君に送って。」 見たのか、と、そう言いたそうな顔をしていた。 「悪いことを…

*戀人 「喫茶店にて。」

とある喫茶店。僕はアイスコーヒーにガムシロップを注ぎながら、向かいに座る男の目をのぞき込んだ。 「君は、僕なんかより、彼女の方が好きなんですよね。だから、僕との関係を隠して、彼女の元へ、通っていたんですよね。」 今まで聞きたかったことを、ぶつ…

*毒吐く独白

「僕は今、どこにいるのかも、わからない。冷たくて寒い、そして暗い、一人ぼっちの空間に、幽閉されてしまったようだ。」 「私は彼の裏側の存在だ。彼が生きている間、私は彼の善行も悪行も何もかもを、記録していなければならない。それは私にとってなんの価…

*三面鏡

うちの洗面所は三面鏡になっている。 そのうち両側の二面が扉になっていて、裏側に歯ブラシなんかをしまっておける。 風呂上りに、三面鏡の前に立った。 いつものように三面鏡の右側の扉をあけて歯ブラシを取り出す。 歯磨きをして、口を濯ぐ。 歯ブラシを…