厭世館へようこそ。

ここは厭世館。ぼくのすむところ。

*戀人 「喫茶店にて。2」



「そう思うか。」


彼は爆発寸前だった。さっきから手元が落ち着かないし、いつもより明らかに声が低い。


「だって……。」


「だって?」


「彼女、嬉しそうでしたね。あんなメール、君に送って。」


見たのか、と、そう言いたそうな顔をしていた。


「悪いことをしたと思っています。」


「お前なあ、」


「本当なんですね。」


「あ?」


「僕が要らないって言うのは。」


言いたくもない単語が、口をついて出てくる。


「この話をした時、何がなんでも否定してくれると思っていました。お前の気の所為だ、って。くだらないこと聞くな、って。」


「…………。」


涙が、溢れてくる。奥から奥から。言葉が上手く発せられなくなって、苛立つ。


「僕には、君しか、居ないのに。どうして君は、僕だけを見てくれないのですか……?」


やっと発した言葉。もう、これ以上は、何も言えない。こんなに溢れてくる何かを、僕はもう受け止め切れなかった。


「……とりあえず、場所を移そう。そんなに泣いてたら、話すことも話せないだろ。」


「……はい。」


喫茶店を出て僕の家に向かう。手の甲が擦れるくらいの距離を歩いているのに、それは繋がれることはなかった。一番安心したい時に、あの一番心地よい体温を感じられないのは、僕の心を余計に塞ぎこませていった。